サラリーマン尺八

今日、和楽器屋さんで尺八を見かけました。

尺八を見ると、父が働きながら近所の教室の先生に習って
一生懸命練習していたことを思い出します。


しー1

子供の頃、父の部屋から聞こえてくる尺八の音色が
なんともいえない深みと味わいのある音で
和楽器の奏でる侘び寂びの世界に興味を持ってしまいました。


しー2

一度始めた事は、コツコツと続ける父でした。
何年も続けて行くうちに、その音色はかなりのレベルに達していました。
子供にもはっきりわかるほど演奏が上達していったのです。

ただある時に、父は突然尺八を習う事を辞めてしまいました。
その理由が長い間わからなかったので聞いてみることにしました。


しー5

父は、一瞬戸惑ったもののこう答えました。
「耳がね。耳。聞き取る耳が良くなってくると、
 自分の出している音色に我慢が出来なくなる。
 もっといい音、もっと良い演奏、もっと良い楽器がほしくなる。」

きりがなくなってきてしまうのでやめた、ということでした。

あっさりした結論でしたが、語る表情から、本当は
やめたくなかったんだという感じがしました。
父もその昔はサラリーマンでした。


しー6

仕事のノルマと住宅のローンと車のローンと子供たちの教育費と
たくさんのものを抱えながら、コツコツと生真面目に働いていました。
母が、たまたま近所の尺八の教室を見つけ、自分のために何かを買う事も、
時間を使う事もまったくしなかった父に勧めたことで始ったようです。
初めて買った安い尺八を、嬉しそうに大事に吹き続けていたそうです。

でも、尺八は技術がある程度まであがってくると
安い楽器ではどうしても出ない音があるようです。しかも本来は
長さの違う尺八を何本も持っていないといけないようです。


しー4

父はかなり一生懸命やっていくうちに、教室の師匠から、
もっと高い尺八を持つ事や、何本も尺八を持つ事を勧められ
その必要性も強く感じながら、これ以上お金をかける事は
今の状況ではできないと思って、きっぱり辞めたようです。


笑顔で、その当時の尺八を見せてくれましたが
きっとコツコツ続けて来た事を辞めるときは悔しかっただろうな
と思いました。途中で投げ出す事が一番嫌いな父だったので
なおさらの悔しかっただろうと思いました。

しー3

私の選んだ三味線も、同じような部分はあるかもしれません。
かなり覚悟して教室の扉を叩きました。
ただ私の場合は、受け入れてくれた師匠や
周囲の兄弟子、姉弟子に恵まれていました。
なるべくお金をかけないようにどうできるかを考えてくれて
いろんな工夫やアイデアや技術で音を良くする方法を教えてくれます。
楽器よりも腕がすべてという気持ちでとことん教えてくれます。
必要以上のお金を一切とられることがないうえに
それどころか、腕さえ上げればどんな楽器でも
素晴らしい音を出せるということを
目の前で見せて聞かせてくれて証明してくれるのです。
よい環境のおかげで、今も辞めずに続けられているんだと思いました。
この環境でなければ、私も父のように
急に辞める事になっていたかもしれません。

やめてしまった父の尺八への思いも預かって
私は三味線に気持ちをぶつけていきたいと思います。
今日も仕事と三味線頑張ります。

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お久しぶりです

良いブログありがとうございました。今の自分を見つめる時期、良い参考にさせて頂きました。素晴らしいお父様に感謝です。

こんにちは!

お久しぶりです。読んで頂き嬉しいです。
父が最終的には和楽器をあきらめる事にした悔しさを、
私は勝手に引き継いでおります。
私もどこまでいけるか分かりませんが、
「三味線は腕だ。」と信じてこれからも頑張って行きたいと思います。
いつか父に私なりに最高の演奏を聴かせたいと思っています。

> 良いブログありがとうございました。今の自分を見つめる時期、良い参考にさせて頂きました。素晴らしいお父様に感謝です。

貴方なら

多分お父様は分かっていたんだと思います。貴方が三味線でどこまで行けるか…お父様は行きたいけれど多分自分の実力は家庭を犠牲にする迄には行かないと自分を理解したのかもしれません…私には何となく分かるんです!!でも貴方は違います、今置かれてる現実はお父様とは違いますよね!!そのまま貫いて下さい♪応援してます、私はお父様と同じで…終ります。今まで本当にありがとうございました。

Re: 貴方なら

サーフさん
父は教室に通うのをやめましたが、
自分で時間のある時いまでも尺八を吹いています。
今でも吹いているときは楽しそうですよ。
付き合い方を変えたんだと思います。
サーフさんも自分にあった付き合い方が見つかるといいですね。


プロフィール

邦風

Author:邦風
澤田 邦風(さわだ くにかぜ)と申します。東京で、仕事をしながらライフワークとして津軽三味線を演奏する日々を送っています。良い音色とは何か、日々追求しつつ頑張っています。「邦風ホームページ」でも活動が見られますので、見てみてください。

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